ビレーの朝はいつも早かった。薄暗い空の下、ラーンはイシェを起こすために戸を叩いた。「起きろ起きろ!今日はテルヘルが待ってるって言うんだぞ!」
イシェは眠そうに目を擦った。「また遺跡か…。」ラーンの無計画さに辟易しながらも、彼女は立ち上がった。最近、テルヘルの依頼で遺跡探索に明け暮れている日々。大穴を夢見るラーンとは異なり、イシェは現実的な利益を求めていた。しかし、テルヘルが提示する報酬は魅力的で、いつの間にか遺跡探しも日常の一部になってしまっていた。
今日の遺跡は、ビレーから少し離れた山腹にあった。かつては神殿があったと伝えられる場所で、今は崩れかけた石柱だけがひっそりと佇んでいる。テルヘルは地図を広げ、「ここが目標だ。古い文献によると、ここに強力な魔導具が眠っているらしい」と説明した。
ラーンは目を輝かせた。「よし!早速探検だ!」
イシェはため息をついた。「またおろおろしてる…」
遺跡内部は暗く湿っていた。石畳の床には苔が生え、壁には謎の文様が刻まれていた。テルヘルが先導し、ラーンとイシェが後をついて行く。
「ここからは気をつけろ。罠があるかもしれない」
テルヘルの警告を無視するように、ラーンは軽快に歩を進めた。イシェは彼のことを見つめながら、ため息をつく。「いつもおろおろしてる…」
すると、突然床が崩れ、ラーンは深い穴に落ちてしまった。イシェは慌てて駆け寄った。「ラーン!大丈夫?」
ラーンの顔は土で汚れていたが、彼は笑いながら立ち上がった。「転んだだけだ。心配するな!」
イシェは呆れた。「本当にいつもおろおろしてる…」
テルヘルは冷静に状況を判断した。「ここは危険だ。引き返そう」
しかし、そのとき、穴の底から奇妙な光が漏れてきた。ラーンは目を輝かせた。「もしかして…?」
イシェは不安を感じながら、ラーンの後を追いかけた。
穴の奥深くには、黄金に輝く魔導具が置かれていた。それは古代文明の技術の結晶であり、莫大な力を秘めていた。
ラーンは興奮した様子で魔導具に触れようとした。「やった!大穴だ!」
しかし、イシェは彼を制止した。「待て!何か変だ…」