ラーンの大雑把な指示に従い、イシェは苔むした石段を慎重に降りていった。薄暗い遺跡の奥深く、ひんやりとした湿気が漂う空間へと続く通路だった。
「待てよ、イシェ。あの壁画、よく見ろ。」
ラーンが振り返り、指さす方向を見た。壁一面に描かれた幾何学模様は、まるで呪文のように複雑に絡み合っていた。「おまじないか何かだな」とラーンが呟くと、イシェは眉をひそめた。
「そんなわけないだろう。ただの装飾だ」
イシェは冷静にそう言い返したが、内心では一抹の不安を感じていた。この遺跡には何か不気味な雰囲気が漂い、いつも以上に警戒が必要だと感じさせたのだ。
テルヘルは背後から近づき、壁画をじっと見つめた。「興味深いですね。この記号群は、失われた古代文明の言語と類似しているかもしれません」
彼女の言葉にラーンが興奮気味に、「じゃあ、宝の場所を示してるんじゃないか?」と目を輝かせたが、イシェは冷静さを保つように努めた。
テルヘルは少し微笑んだ。「可能性はありますね。しかし、安易な解釈は避けましょう。この遺跡には、我々が知る以上の秘密が眠っているかもしれません」
その言葉にラーンは少し肩を落とし、イシェも深く頷いた。
「よし、とにかく進むか!」
ラーンの声が響き渡る中、イシェは不吉な予感を拭い去ることができなかった。この遺跡の奥底には、彼らを待ち受ける何かが潜んでいるように感じたのだ。