ビレーの酒場「三叉路」はいつも混んでいた。ラーンとイシェはいつものようにカウンター席に座り、粗雑な食事をしながら、今日の遺跡探査について話していた。
「あの遺跡の奥深くには、巨大な宝が眠っているって聞いたぞ」とラーンは目を輝かせた。「今回は必ず大穴を見つける!」
イシェは眉をひそめた。「またそんな話か。大穴なんてどこにもないって、何度も言ってるじゃないか」。
その時、背後から冷たく低い声が響いた。「まだ、諦めていないんですね」
ラーンとイシェが振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女の鋭い眼差しは、まるで氷のように冷たい。
「今日は準備万端です」とテルヘルは言った。「あの遺跡の奥深くにあるという、ヴォルダンの秘密兵器の場所を突き止める必要があるんです」
ラーンは、テルヘルの言葉に少しだけ怖さを覚えたが、すぐにいつもの調子を取り戻した。「よし、行こうぜイシェ!今日は必ず大穴を見つけるぞ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの肩を叩いた。「気をつけろよ。今回は本当に危険な場所だ」
三人は遺跡へと向かった。日が暮れるにつれて、空が暗くなり始めた。遺跡の入り口には、奇妙なシンボルが刻まれた石柱が立っていた。
「ここが噂の遺跡か…」イシェは不安そうに言った。「何か嫌な予感がする」
ラーンは、イシェの言葉に耳を貸さず、遺跡の中へと歩みを進めた。テルヘルは彼らをじっと見つめながら、後ろから続いた。
遺跡の内部は、薄暗く、湿っていた。壁には、何千年も前に刻まれた謎の文字が刻まれていた。
「ここには何かある…」ラーンの視線が、奥深くにある一室に注がれた。「大穴が見つかる予感がする!」
イシェはラーンを制止しようとしたが、遅かった。ラーンはすでにその部屋へと入っていった。
部屋の中央には、巨大な石棺が置かれていた。石棺の上には、奇妙な模様が描かれており、不気味な光を放っていた。
「これは…!」ラーンの目は驚きに満ち溢れていた。
その時、石棺の蓋が開き始めた。石棺から、黒い煙のようなものが立ち上がり、部屋中に広がった。
イシェはラーンを引っ張ろうとしたが、ラーンの体はすでに動かなかった。彼の目は空虚に輝き、奇妙な笑みを浮かべていた。
「おあずけ…」イシェの耳元で、テルヘルの声が響いた。「さあ、始まりの時間です」