ラーンの鼻息が荒くなった。イシェは背後から彼をじっと見つめていた。いつもなら、ラーンはこのように夢中で遺跡の奥深くへと突き進むことはない。だが、今日は違う。彼の目は glazed over し、まるでぼんやりと遠くを見つめているようだった。
「ラーン？」イシェが声をかけると、彼はゆっくりと顔を上げた。その顔には、疲労の色が濃く浮かんでいた。「どうしたんだい？何かあったのか？」
ラーンは首を横に振った。「いや、別に…ただ少し疲れただけだ。」しかし、彼の目はまだぼんやりとしていた。イシェは彼の様子に不審を感じつつも、何か言及することはしなかった。
テルヘルは地図を広げ、遺跡の構造を分析していた。「ここはかつての王宮の一部らしい。地下深くには、秘宝が眠っているという噂だ。」彼女は冷酷な表情で言った。「我々が探すものは、単なる金銀ではない。ヴォルダンに奪われたものを取り戻すための鍵だ。」
ラーンの耳は、テルヘルの言葉に反応した。彼はうたた寝をしながらも、ヴォルダンの名前を聞くと、背筋が凍りつくような感覚に襲われた。彼の心には、復讐の炎が燃え盛っていたのだ。イシェはラーンの表情の変化を察知し、不安な気持ちで胸が締め付けられた。
彼らは遺跡の奥深くへと進んだ。暗い通路に、不気味な影が揺らめいていた。ラーンの足取りは、以前よりも重く、彼の呼吸も荒くなっていた。イシェは彼を心配しながらも、一歩ずつ進んでいった。
突然、ラーンが立ち止まった。「何か…感じる。」彼は目を閉じ、深く息を吸った。「何か…いる。」
イシェは緊張した表情で周囲を見回したが、何も見えない。しかし、彼女の背筋にもぞわぞわとした感覚が走り始めた。テルヘルは冷静に剣を構えた。「何だ？」
その時、壁から不気味な音が響き渡り、ラーンがよろめいた。イシェは彼を抱き止めたが、ラーンの顔色は青白くなり、意識を失いかけていた。
「ラーン！」イシェの声が、遺跡の静寂に響き渡った。