ビレーの朝焼けが空を茜色に染め始めた頃、ラーンはいつもより早く目を覚ました。今日は違う。今日は何かが違う。胸の奥底から湧き上がる、まるで幼い頃に見た夢のような、そんな高揚感が彼を突き動かしたのだ。
「イシェ、起きろ!今日は大穴が見つかる気がするんだ!」
ラーンの叫び声で、イシェは眠りから覚めた。いつも通りのラーンの無茶な発言に、彼女は眉間にしわを寄せた。「またそんなこと言って…」と呟きながらも、どこかワクワクする気持ちを押さえきれない自分がいた。
「今日はテルヘルが新しい遺跡の場所を教えてくれるって言うんだぞ!きっと大穴だ!」
ラーンは興奮気味に言った。テルヘルとの契約は、彼らにとって大きな転機だった。高額な報酬と引き換えに危険な遺跡を探検し、見つけた遺物を独占的に扱うという内容だ。
イシェは冷静に状況を分析した。「大穴」はあくまで噂であり、実際には何一つ見つかっていない。それでも、テルヘルの情報網は確かだった。そして、今回は特に期待できた。
「よし、準備を始めよう。」
イシェは重い足取りで起き上がり、装備を整え始めた。ラーンの興奮をそのまま受け継ぐように、彼女の心にもうきうきとした気持ちが広がっていた。今日も、ビレーの街から少し離れた場所に、彼らは遺跡へと向かう。未知の世界への冒険、そして、もしかしたら夢が叶うかもしれないという希望に胸を躍らせながら。