ラーンがいつものように、寝坊した。イシェの機嫌を損ねたまま、ビレーの酒場でテルヘルと合流した。
「遅刻だぞ、ラーン。今日はいい遺跡の情報が入ったんだ」テルヘルは眉間に皺を寄せて言った。ラーンの後ろからイシェが顔をのぞかせ、「いつもこの調子で、いつまで続くんだ…」と呟いた。
「よしよし、今日は大穴が見つかる予感だ!」ラーンはそう言って、イシェの頭を軽く叩いた。イシェは溜め息をつきながら、テルヘルの後をついていった。
遺跡へと続く道は険しく、日差しが容赦なく降り注いでいた。ラーンの陽気な歌声だけが響いている。イシェは疲れを隠しながら、地図を確認していた。
「ここだな…」テルヘルが立ち止まった。遺跡の入り口には崩れかけた石碑が立っていた。
「よし、準備だ!」ラーンは剣を抜こうとしたその時、テルヘルが彼を制した。「待て。ここは罠が多いらしいぞ。慎重に」
イシェはテルヘルの言葉に同意し、懐から小さなランタンを取り出した。「確かに、ここには何かいる気配を感じる…」彼女は静かに周囲を見回した。
すると、石碑の陰から、不気味な影が動き出した。ラーンの剣が光り、イシェは素早く後ろへ跳ね返った。テルヘルは冷静に状況を判断し、影を誘導しながら戦い方を模索する。
しかし、その影は予想以上に強かった。ラーンは次第に追い詰められ、イシェも傷ついてしまった。
「このままでは…」イシェは絶望的な気持ちになった。その時、テルヘルが不敵な笑みを浮かべた。「待て、まだだ!」彼女は何かをささやいた後、影に向かって飛び込んだ。
影との戦いは長く激しく続いた。ラーンとイシェは息を切らしながら、テルヘルの活躍を見守っていた。そしてついに、テルヘルは影を倒し、勝利した。
「よかった…」イシェは安堵の言葉を漏らした。しかし、彼女の顔にはまだ不安が残っていた。
「さあ、遺跡に入るぞ」テルヘルがそう言うと、ラーンの肩に手を置いた。「だが、お前たちは覚悟しておけ。この遺跡には、もっと恐ろしいものがあるかもしれない…」
ラーンは何も言わずに頷き、イシェもテルヘルの言葉の意味を理解した。彼らは、まだ知らない危険に立ち向かうことになるのだ。そして、その危険は、彼ら自身をも変えてしまうかもしれない。