ラーンの豪快な笑い声は、ビレーの狭い路地裏に反響した。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼を睨みつけた。
「また遺跡で宝物を発見したと? ラーン、一体いつまでそんな夢を見るつもりだ?」
イシェの言葉は冷酷だった。ラーンの無謀な行動に、彼女はいつも苛立ちを感じていた。特に、最近では、ヴォルダンの脅威が迫る中、遺跡探しのために時間を無駄にすることに憤りを感じていたのだ。
「何だって?俺たちの未来は遺跡にあるんだぞ!いつか必ず大穴を掘り当ててやる!」
ラーンは、イシェの言葉に耳を貸すことなく、胸を張って宣言した。彼の目は輝き、まるで未来をすでに見ているかのような自信に満ち溢れていた。
だが、イシェにはそんな楽観的な見方ができなかった。ビレーの人々も、ヴォルダンからの脅威を感じ始めていた。彼らは、かつてこの地を支配していた強力な勢力であり、その影は今なお人々の心を蝕んでいた。
「そんなことより、テルヘルから新しい依頼が入ったんだよ」
イシェは、ラーンの夢のような話に終止符を打ち、現実の世界へと引き戻した。テルヘルの依頼はいつも危険なものばかりで、今回は特に深刻な状況だった。ヴォルダンとの国境付近の遺跡を探検するよう依頼され、その報酬も異常に高額だったのだ。
「何だ?また危険な遺跡か?」
ラーンの顔色が少し曇ったが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「よし、行こうぜイシェ!今回は必ず大穴を見つけるぞ!」
ラーンは、興奮した様子でイシェの腕を掴んだ。しかし、イシェの心は不安でいっぱいだった。ヴォルダンとの戦いが近い中、遺跡探検などする余裕はないと感じていたのだ。
テルヘルは、彼らの前に立っていた。彼女の顔色は悪く、目には深い疲労が宿っていた。彼女は、ヴォルダンから逃れてきた者であり、彼らに復讐を果たすために、ラーンとイシェを利用しているようだった。
「今回の遺跡は特殊だ。ヴォルダンが何かを隠している可能性がある」
テルヘルの声は低く、力強く響いた。
「お前たちは、あの遺跡を探し出し、その秘密を解き明かす必要がある。」
ラーンの顔色が一変した。イシェも、テルヘルの言葉に息をのんだ。ヴォルダンが隠している秘密とは一体何なのか? そして、なぜ彼らにそれを探すよう依頼してきたのか?
イシェは、不安な気持ちを抑えながら、ラーンとテルヘルを見つめた。彼らの運命は、この危険な遺跡探検にかけられていたのだ。